Last Up date:2003-12-6

■ステージ2 -進化って何?どうやっておこるの?-
中井咲織 立命館宇治中学校・高等学校(smatsu@ujc.ritsumei.ac.jp

 現代科学では、地球上に住む何千万種の生物は、すべて、たった1種類の原始生物から
進化」して生じたことがほぼ確実視されている。進化は生物の多様性を語る上で、そして、我々人類がどこから来て、どこへ行くのかを考える上で、たいへん重要な概念である。
 ところが、進化のしくみについては誤解や偏見がとても大きい。それは、こども・大人を問わず、進化のしくみについてきちんと学習する(した)機会がほとんどないからである。
 今回の発表では、進化のしくみを正しく理解するために、進化とは何か、進化はどのように起こるのか、進化はどんなとき起こるのかを、演示実験、実際の事例などを交えながら、小学生にもわかるように具体的にわかりやすく説明する。
 さて、一般社会で「進化」は誤って使われる場合がある。例えば、子どもたちの間で人気があったポケットモンスターの進化は、進化ではない。それは「変態」とか「成長」というべきものである。また、スポーツ選手や子どもたちが成績を伸ばした場合にも「進化した」と使われることがあるが、これも進化ではない。努力して獲得した性質は遺伝しないので、これは「学習」とか「成長」というべきものである。1世代の中で起こった変化はすべて「進化」ではない。
 進化とは、祖先とは異なる形質を持つ子孫集団ができることである。世代交代する間に遺伝子が変化し、子孫集団の形質が祖先と異なったとき、その集団は「進化した」という。世代交代する間に、進化のメカニズムがはたらいたとき、進化が起こる。
 それでは、進化の原動力である、進化のメカニズムは何なのだろうか。
 それは、「突然変異」と「自然選択」である。
 突然変異とは、遺伝子のコピーミスなどによって生じるDNAの変化のことである。私たちがすべて違うのも、全ては祖先のどこかで起きた突然変異に由来している。突然変異はランダムに起こるため、ありとあらゆる突然変異が生じる。みんなが違っていること、つまり「変異」があることが、進化の起原であり、絶滅するかしないかを分けるカギでもある。
 自然選択とは、環境に不利な形質を持つ個体が集団から取り除かれることである。変異の中で、その環境に不利な形質を持つ個体は、子孫を残しにくくなり、そ遺伝子は集団の中から取り除かれる。環境が変わらないときは、安定化選択によって中間の形質を持つものが有利になるため、進化は起こらない。しかし、環境が変化すると、それまで有利だった形質が不利になったり、それまで不利だった形質が有利になることがある。そうすると、今までと異なる形質に自然選択がはたらくため、子孫集団の遺伝子頻度が変化し、進化が起こる。

 このように、ランダムに変異が生じ、環境が変化することによって選択のしかたが変化すると、進化が起こる。
 このことから、進化に関する2つの傾向を読み取ることができる。一つは、環境が変化したときに進化が起こりやすいということだ。環境が変わると、自然選択を受ける個体も変わるからである(ヒトは、その祖先のサルが住んでいたアフリカの地形が変わり、森から草原に変化したために、歩くのが得意なサルに進化したと考えられている)。もう一つは、小さな生物ほど進化しやすいということである。小さな生物は寿命が短いので一定時間内で産む子の数が多く、そのため、突然変異を持つ個体が多く生まれるからだ(インフルエンザウイルスや黄色ブドウ球菌が進化しやすいのはそのため)。
 さて、進化しにくい生物、つまり変異の小さな生物は、絶滅する運命にある。なぜなら、環境は必ず変化するものだからである。地球の気温一つとっても、その歴史を見ると寒暖を繰り返している。変化した環境で生きられる個体がなければ、絶滅するしかないのである。集団の変異が大きい生物は、環境が大きく変化しても絶滅しない。生物は、さまざまな方法で変異を生み出す努力をしている。
 ヒトの場合、寿命が長く少産であるため、一定時間に生まれる子の数が少ない。つまり他の生物に比べて突然変異が生まれにくいのである。将来必ず起こるであろう環境変化にもヒトが絶滅しないためには、変異を維持することが重要だ。いろんなひとがいるということは、将来どんな変化が起こっても、誰かが生き残るということで、すばらしいことである。したがって、何かが劣っているとか違っているとか、障害があるとかの理由で差別したり排除したりすることは、進化学的に見ても間違っている。イジメや偏見を全否定する科学的理論という面でも、進化の正しい理解は重要であると思われる。

 

 

■ステージ
空気の力と力比べ
進化って何?どうやっておこるの?
科学の芸人養成講座
恒星間飛行船”ヒップライナー”
クォークをあなたの身近に!
■ブース
星を手にとって確かめ学ぶ小四の星学習
磁石を見る-磁界の分布を可視化する-
言葉を見る
雨粒をつかまえよう
気体をつかまえよう!
花粉を覗く
簡単な実験や教具で確かめる宇宙

 

 


お問い合わせoffice@sci-fest.org
copyright© 2003 「科学教育フォーラム2004」実行委員会