図1 ガーネット薄膜の例
図2 磁石モジュール
図3観察用装置
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はじめに
空間的に離れた磁石は,発生している磁束によりお互いに反発や引き合う力を及ぼしあいます.人間は磁束を見ることはできませんし,感じることもできないと考えられています.
しかし,現代社会において,磁石は広く使われ,様々な機械システムや動力システム,ディスプレイ装置,センサーシステムなどの基礎的な技術として応用されています.本講演では,簡単な装置を使って,磁石のパターン,すなわち磁束のパターンを目に見えるように変換します.実際に実験ブースに装置を??置し,磁束を光の濃度パターンに変換する特殊なフィルムを用い,偏光板と組み合わせます.その場で実際に磁束を目で見る実験を行います.
目で見て直感的に感じることにより,磁石から発生する磁束についての基本的な理解を助けます.
実験
磁界と光をお互いに作用し合う材料として磁性鉄ガーネットという材料があります.よく知られた宝石のガーネットに鉄を導入した材料です.鉄が含まれていますので,磁性を持ちます.さらに,この磁性材料は特殊で,透明です.この鉄ガーネット材料をナノ粒子として合成して,薄膜状に加工しました.図1 に加工した例を示し
ます.オレンジ色の材料が,鉄ガーネットの薄膜であり透明です.
この鉄ガーネット材料は,通る光に影響を与えます.光をあてると,光の偏光面が変化します.最近非常に広く利用されている液晶表示装置と同じように,光の偏光が変化します.このときの偏光の変化の様子は,磁界の方向と大きさによって決まります.
さて,図2のように永久磁石を組み合わせると,磁石のNSがお互いに交互に存在するような磁石モジュールができます.この上に,図1に示したフィルムと反射板を重ねて載せます.そして,図3に示すような装置で光を当てます.このとき,フィルムを通って反射した光を偏向板を使って観察すると,磁石の形が浮き上がって見えます.磁石のNSの組み合わせ状態が,光の中に浮き上がってきます.すなわち,普通は見ることが出来ない磁石モジュールのNSの様子が,フィルムを使うことで見えることになります.図4に観察した結果をお見せします.磁石のNSの様子をはっきりと見ることができます.
まとめ
光と磁性の相互作用を利用した機能性材料を合成して,それを応用した機能性フィルムを研究開発してきました.現在,開発したフィルムを製品として展開して行くことを模索しています.合成した薄膜は,磁石から発生する磁界のパターンを目で見えるように可視化する機能を持っています.これを使うと,人間が普通の状態では見ることが出来ない磁界の様子を見ることができるようになります.物理的な現象をより容易に理解するには,人間の感覚で直感的に感じることが最適と思います.磁界の変化を直感的に感じて頂くことを考えました.皆様,ぜひ御覧下さい.出場者の詳細については,以下のURLを参照ください.
http://www.ce-hirano.com/
図4 鉄ガーネットフィルムを使って観察した磁石のNSパターン