司会者紹介
永井智哉
理学博士。専門は理論天文学。科学技術振興機構研究開発戦略センターに所属、環境・エネルギー分野を担当。
日本宇宙少年団、日本ハンズオンユニバース協会などに所属し、宇宙を中心とした科学教育普及活動を数多く行ってきている。ライブ!ユニバース事務局長、日本天文学会ジュニアセッション実行委員、アットマーク国際高等学校特別講師なども務める。
著書に『地球がもし100cmの球だったら』(世界文化社)がある。日本テレビ「世界一受けたい授業」などに出演。
目黒ゆかこ
タレント。サンミュージック所属。
NHK教育TV「高校講座・理科総合」レギュラー出演中
テレビ東京 「いい旅夢気分」「ぐっどもーにんぐ」
日経CNBC 「江戸の知恵・デジタルで浮世絵を読む」
映画「September Steps 〜千年の記憶」主演
映画「探偵事務所5〜白い薔薇の女」ヒロイン
など
出演者紹介
長嶋 淳(伊勢原市立山王中学校)
私たちのまわりには、普段あまり気にしない「空気」があります。確かに存在するのです。
この空気の存在や力を確かめるには、ちょっと工夫が必要です。なぜなら、「空気」は、見えないからです。
空気の「存在」、「重さ」、それを利用するとものすごい「力」がでることを実験を通してお見せできればと思います。
また、このサイエンスショーを通して、科学は身近な存在であること(空気のようなもの)とサイエンスショーを楽しむ文化が生まれてくれればと
考えております。そうすれば「理科離れ」などという言葉は無くなるのでは!!
科学を楽しむ心を大切にしていければと思っております。どうぞ、楽しんでください。そして、科学に親しんでください。
月僧秀弥(三国中学校)
ヒトのまわりには音があります。普段考えない音の性質を考え楽しむことができないかと考え,今回のショーを構成しました。
音の本質を考えてみると,「音=振動」です。そして,この本質から考えられる音のことがその後の2つになります。ショーを通してこの3つのことを伝えていきます。
音=振動
空気の振動が音を伝える
音の高さ=振動する物体の重さ
この3つのことを伝えるためにショーを構成しました。実験とはいえこれはショーなので観客が飽きないように自ら考える場面を設定したり,次々に新しい実験器具を使用します。
また,音は楽しさです。それぞれの実験を通してこの3つのことを伝え,そして音を楽しんでいくうちにそれが音楽になる。この流れの中で,観客は音を知り,いつも聞いている音に科学を感じていくことができるでしょう。特別な実験はありません。身近なものを使い行われる実験であり,子ども達は自分たちもやってみたいという気持ちを持てるのではないかと思います。
福岡 孝(島根県立三瓶自然館)
2005年の宮城県沖地震では、関東平野などで長周期の地震波が発生し、高層ビルが大きく揺れました。一般に同じ震度の地震でも、その地震の特性や地質、また建物により揺れ方が異なります。これらの要因に地震波の卓越する周期成分と建物の固有周期が関係しており、これをわかりやすい演示実験で示します。
長さを変えた振り子を振らせて、周期の異なる振動を発生する簡易振動板を製作しました。この振動板に2種類の固有周期の異なる置物(例えば起きあがりこぼしなど)を置き、それぞれの固有周期に合った周期で振動板を動かします。振動板の周期と置物の固有周期が一致した時に共振して大きく揺れ、一致しないと大きくは揺れないことがわかります。このことから、震度が小さくても地震波の周期と建物の固有周期が一致したときに建物が大きく揺れ、破壊されることを理解することができます。
内陸で起こる直下型の地震では0.5~1秒くらいの短周期成分が多いので、高層ビルよりも、一般の住宅等に大きな被害が出ます。ところが、海溝で発生するプレート型の地震では長周期地震動(約3~7秒の周期)が発生し、高層ビルの固有周期と共振して大きく揺れます。さらに、関東平野では軟らかい地層の下にある固い岩盤がすり鉢状になっていて、長周期の地震波が岩盤で何回も反射し大きな揺れが何分間も続きます。来たるべき大地震に高層ビルは耐えられるのでしょうか?
原田正治(広島文教女子大学初等教育学科)
エジソンの蓄音機を参考にして、身近な材料を使って蓄音機を作りました。今回は私の作った蓄音機を使って子供達と音について学びます。蓄音機の原理は次のようなものです。マイクロフォンとスピーカーを兼ねた紙コップの底に竹針が接着されています。コップに向って大きな声を出すと、音にあわせてコップの底が振動し、針が接したアルミ箔の上に凹凸のある傷が残ります。再生では、アルミ箔の凹凸の傷の上に竹の針を走らせます。すると、針とコップの底が録音した音と同じように振動し、コップの中の空気も振動して音が再生されます。子ども達には、この蓄音機で「メリーさんのひつじ」を録音し再生して聞かせ、130年前にエジソンが作った蓄音機もこれと同じような音がして、当時の人々がどんなに驚いたかを想像してもらいます。
音の性質についての勉強は、録音したアルミ箔の傷を拡大して見せながら行います。音のない所は単なる直線の傷ですが、録音個所では凹凸がある傷ができています。凹凸を観察すると、(1)音の強度と窪みの深さに相関があることから、音の強度は空気の振動の振幅に関係することを教えます。次に(2)音の高低と凹凸の間隔が相関していることから、音の高低は空気の振動数で決まることを理解させます。さらに、(3)凹凸の形の微妙な違いから、同じ大きさ、同じ高さの音でも、振動に混じる微小な変化が音色と関係することを説明します。こうして、蓄音機で録音したアルミ箔の傷跡から、空気の振動の(1)振幅による音の強度、(2)振動数による音の高低、(3)微小な変化が関係する音色、これらが音を特徴づける基本的な性質の3要素であることを理解させます。最後に、CDやMDでは録音部にレーザー光を当て、その反射光を受けて再生することを話し、私の蓄音機でもアルミ箔の録音跡に光を当てて反射光を光電池で受けラジカセに入力すれば光学的に再生できることを演示して、これがCDやMDの簡単なモデルであることを説明します。
市原義憲(大阪府箕面市立東小学校)
まず、舞いぎりでの火起こし、火打石での火起こしなどの実演から人類が火を得
るまでの歴史をたどります。
そして、火の利用法から明かりに注目し、オイルランプ、アーク灯、電灯への進化をたどります。ほんの100年程前までは明かりを得るためには火を燃やさなければならなかったのが、電気エネルギーの利用で明かりを簡単に得ることができるようになったことなどをエジソンの努力と「世界から夜が消えた」と言われたように人々の驚きと科学技術への感謝を交えて説明します。
その中でシャープペンシルの芯や鉛筆の芯を使ったアーク灯、電球のモデル実験を行います。さらに熱と光と電気のエネルギー変換にも触れていきます。
熱による発光ということで、シャープペンシルの芯で鉄を切断する実験や逆に熱の発生の少ない蛍光灯の発光の仕組みを電子レンジや静電気による発光の実験を絡めて説明しながら演示実験をしていきます。
最後に長寿命で省エネである発光ダイオードの発明に触れて、人類の明かりへの挑戦をしめくくります。
益田孝彦(三浦市教育委員会 学校教育課)
概要企画意図・ねらい・伝えたいことは、『空気には重さがあること(必達目標)、大気圧は強力だ(到達目標)、大気圧が沸点に影響していること、ショーの楽しさを伝える。』である。
その目的を達成するため、以下のような工夫を施している。
- 起承転結を意識した次第に深まっていくリズミカルなショー仕立て。
- 小学生に分かる用語選択。
用語が難しく小学生が概念を作っていけないサイエンスショーは避けなければならない。たとえば、わたしたちが定義をよく知っているからと言って、「圧力」を力を面積で割った単位面積あたりの力という定義にこだわると、伝えたい空気の力の大きさが、わかりにくくなる。「空気の力」という表現で押せる場面は、極力その表現でイメージを形成させるよう配慮している。
- 小学生に分かる表現選択。
私が考えるより良いサイエンスショーは「絵本」のようなショーである。①絵面のおもしろさ(現象のおもしろさ)②分かる用語選択(前述)③対象物である臼やカニがしゃべる擬人法・分かりやすさの3点が重要だと考えている。特に③が大きな工夫と考えている。本日の実験でも「沸点」という現象を「水の気持ちになって説明する」場面がある。子どもに理解しやすい目線を考えることは非常に大切だと考えている。
さて、本日の実験メニューに関してコメントをしておこうと思う。1.の逆さコップで手品も入れているが、初発の掴みとして行っている。2.空気の重さを感じない理由を示すため「浮力」の実験を入れたが、項目とレベルの点で論議を呼ぶであろう。3.現象の理由が別の概念を必要とするが、児童参加の場面として重要視している。4.水の視点で考えます。5.有名な実験ですが、概念を補強してくれる実験として有効。6.正真正銘オリジナル実験。エピソードも大事な紹介対象である。7.最後の締めで概念をまとめ上げていくものである。
境 智洋(北海道立理科教育センター)
石に興味がありますか?石を見たことがありますか?
そんな問いかけから始めます。そして20分の観察・実験ショーの後に、「石にちょっと興味がわいてきた」「石をちょっと見たくなってきた」そんな思いが子どもたちの心に芽生えて欲しいと思います。多くの人から「石で実験ショーなんて。」「派手な実験にはならない。」「あっと驚くことってない。」「石だけなら実験ショーにはならない」と言われましたが、ちょっとした工夫できっと新しい観察、実験ショーが提案できるのではないかと思います。とにかく「石」でチャレンジです。
観察、実験ショーの概要は・・。
1:石で何ができるだろう。
「石をたたいて加工したら」「石と鉄をぶつけたら」「石をたたいたら」
様々な見地から働きかけて、石の意外な姿を見せていきます。
2:石って何種類あるのだろう。
「石に名前をつけてみたら」「石は臭いはするかな」「何が見えるだろう」
火成岩、堆積岩を子どもたちなりに見分けていきます。
3:よし石探検だ!
「ビルの石」「床の石」「ちょっとした周りの石」を映像で探検。さらに「あの山はどうやってできたんだ!火山だろうか? 地殻変動だろうか?」そんな見方で自然を見てみようと思います。
とにかく、石・石・石、石付けの20分 お楽しみに・・・・
Dr. Ilan Sandor Chabay(The New Curiosity Shop, Inc. (USA))
透明な箱の真ん中で、泡を浮かせることができるかな? 泡を凍らせることは、どうかな?箱の中で泡の形や色が変わるのはなぜかな?こういう実験から、私たちの体の中の血についてや私たちが吸い込む空気についてどんなことが分かるでしょう?
私の実験に参加して、ドライアイスと石けんの泡を使うと透明な箱がどんなに不思議で美しい光景をみせるか見てください。単純な実験を通して化学、生物学、物理学について探って行きます。どのようにして私たちは血の中に空気を運んで行くのか、なぜ箱の中で泡が浮き、凍り、色と形を変え、他の泡とくっついたり逆にはじき合ったりするのでしょうか? 疑問に答えるために実験を行い、答えだけでなく、新たな疑問をいくつも見つけて行きましょう。
海野弘光(静岡科学館る・く・る)
このショーを通し、子ども達に伝えたいことは、シャボン玉のしくみを説明しながらも、「シャボン玉を研究するには、家にあるもので十分できる」「構えなくても遊びながらでできる」「気づき、ひらめくことが新しい喜び・新しい遊び・新しい発見につながっていく」ということです。それをストーリー性のあるショー構成を通し、繰り返し表現していくことで、イメージされていけば、幸いだと考えています。
まずは昔からある方法、「ストローを使って吹いてみる」ことからはじめます。それに工夫を加えることで、シャボン玉を大きくしていきます。しかし最近では、シャボン玉関連の情報は、本・インターネットをはじめ、おもちゃとしてもいろいろな種類が出ており、情報・知識を持っている子もたくさんいると思われます。そこであえて奇抜な発想の道具を紹介します。それにより情報・知識に頼るのではなく、自分で思いついたことを試してみることの大切さを表現したいと思います。しかしながらそんな奇抜な発想だけでは当然行き詰まります。そこで従来ある方法を見直して試し、さらに行き詰まったところで新たな工夫を加える。この行き詰まるたびに、「考える」、「調べる」ことが、科学的な思考の本質であると考えます。目標を達成するために「考える」こと、それが私が上記で記したことを伝えることになり、疑問に思ったことを「調べる」ことで、シャボン玉の原理を理解させることにつながります。ショーではそれをそのまま表現することで、子どもとの一体感を生み出し、こんなおじさんがいるんだということを感じてもらいながら、シャボン玉の科学に気づき、理解してもらえれば、さらには「遊びの中にある科学」に気づいてもらえればと考えています。
今回の道具で最も工夫したのは、1m以上のシャボン玉つくるときの枠です。折りたためることで、必要以上のシャボン液を使わなくて済むようにしたことと、シャボン玉をつくるときに、従来あるような2人で枠を操作するのではなく、1人で枠を操作できるようにした点です。
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